社宅に住む従業員の労働保険
社宅に住んでいる従業員の場合、労働保険はどのような扱いになるのでしょうか。労働保険を計算する際に必要になる賃金に関することと、労働保険の計算方法について解説します。
労働保険の計算に用いられる賃金
労働保険の計算をする際に必要になる情報の一つが「賃金」です。労働保険料徴収法において雇用保険法上の賃金は「賃金、給料、手当、賞与、その他名称の如何を問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのもの」と定められています。
ここではすべてのものと定義されているため、現物給与についても含まれています。現物給与とは、現金以外で支給される従業員の利益のことです。 つまり、社宅に関しても従業員にとっての現物給与であるため、原則労働保険料の対象扱いとなります。
算定の対象について
労働保険料において算定の対象となるのは、従業員から家賃の3分の1以下の実費を徴収しているケースです。この場合、差額分が賃金としてみなされる形となります。そのため、3分の1以上の徴収であった場合、算定の対象外です。
例えば、家賃について実費が120,000円の社宅だったとしましょう。従業員から家賃として50,000円徴収している場合、家賃実費の3分の1以上にあたるため、賃金扱いにはなりません。
一方、徴収している金額が30,000円だったとします。実費が120,000円の社宅なので、3分の1にあたる金額は40,000円、その40,000円を10,000円下回っているため、この差額分である10,000円が賃金扱いになります。
社宅に住む従業員の労働保険の計算方法
労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と、雇用保険の総称です。
労災保険料と雇用保険料の計算式
労災保険料については「賃金総額×労災保険料率」で計算できます。雇用保険料の計算式は「賃金総額×雇用保険料率」です。これらの2つの金額を合計することにより、労働保険料が算出できます。
賃金に含まれるもの、含まれないもの
前述したように、賃金とは労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのものです。具体的にいうと、基本給のほか、残業手当、家族手当、通勤手当、管理職手当、住宅手当、定期券・回数券、扶養手当、子ども手当、技能手当、地域手当、奨励手当などが含まれています。
労働保険の保険料を計算する際、現物給与で代金を徴収している場合については原則として賃金には含まれません。ですが、前述したように徴収の金額が実費の3分の1以下であるケースでは、実費の3分の1の額と徴収金額の差額分が賃金扱いになるので、計算に含めるようにしましょう。 さらに、現物給与としては労働の対償として支払われる食事、被服なども対象です。
なお、役員報酬や結婚祝い金、退職金、出張旅費・宿泊費、工具手当、傷病手当金、解雇予告手当などは賃金に含まれません。具体的にどういったものが労働保険対象賃金の範囲になるのかについては、以下を参考にしてみてください。