社宅の家賃の相場
社宅家賃の相場と賃料決定の際に基準となる非課税枠について解説しています。
周辺の賃料の半額以下が社宅家賃の目安
社宅の家賃(使用料)は、会社が社宅規定を作成してそれに従って決定されます。しかし、従業員の負担割合や入居条件などは会社の状況によって異なるため、平均相場を把握することは難しくなっています。
一般的には周辺の賃料の半額以下とされることが多く、10%~20%の範囲が相場と言われています。いずれにしても社宅を利用すれば、従業員は安く入居できることは間違いありません。
参考:マクシブ総合会計事務所 社宅家賃の本人負担額について(https://maxiv.blog/社宅家賃の本人負担額について/)
会社がこのような社宅制度を導入するのは理由があります。社宅の家賃は従業員から一定の割合を徴収すれば、給与として課税されない枠が設定されているためです。
住宅手当のように給与を増やしてしまうと、会社側では負担する保険料が上がり、従業員は所得税が上がってしまいます。社宅として家賃を非課税枠内に設定すれば、会社と従業員双方にメリットが出てくるのです。
したがって社宅の家賃は、国税庁が定めたルール・計算式に従って可能な限り安くなるように決められることになります。
参考:国税庁公式HP No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm)
自社管理と管理委託ではどちらが経費削減につながるか?
自社で社宅を管理する場合問題になるのが手続きや管理業務に時間がとられ、本業に支障をきたしてしまうことです。
初期手続きや毎年更新する必要がある書類など、作成業務に時間がとられてしまうのです。その点、管理委託であればマンション管理会社や社宅代行会社が面倒な手続きをすべて行ってくれます。
入居者からのクレームやトラブルに対応してくれるサービスを展開している代行業者もあるので、自社のスタイルに合った方法を選ぶのがコスト削減にカギになるでしょう。
国税庁の定める非課税枠に収めるメリット
国税庁では会社が社宅や寮などを提供する場合、従業員が負担する家賃が賃貸料相当額の50%以上であれば、家賃と賃貸料相当額との差額は給与として課税されないとしています。
賃貸料相当額とは次の(1)~(3)の合計額から算出されます。
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
参考:国税庁公式HP No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm)
この賃料相当額は実際計算してみると、一般的な賃料相場よりかなり安くなるため、社宅の家賃を低く設定することができます。
仮に賃貸料相当額が3万円だったとしましょう。社宅として無償で従業員に貸し出すと全額給与として課税されます。1万円で貸し出す場合は3万円-1万円=2万円が給与として課税されることになります。
ところが家賃を1万6千円に設定して貸し出すことにすれば、差額の1万4千円は給与として課税されなくなるのです。
社有社宅だけでなく借り上げ社宅の場合も、貸主等から固定資産税の課税標準額を確認して上記計算式に当てはめれば、賃貸料相当額を算出することができます。
社宅を導入してコスト削減に繋がる3つのポイント
社宅を導入することによって福利厚生を充実させ社員の満足度を高められますが、企業サイドにおいても財務上で大きなメリットとなります。
1.社宅費用は経費として申告できる
大きなメリットのひとつは社宅を導入することによって、社宅にかかる費用を福利厚生費として経費から差し引き可能である点。
家賃補助ではなく、社宅の家賃を企業が支払うことで会社の経費となるのです。経費として計上するには、社宅を法人名義で契約しなければなりません。社員に社宅を無料で貸してしまうと、社宅の家賃が社員の月収と捉えられてしまうので、課税対象となってしまいます。
社宅を経費として申請するためには一定の家賃レベルが必要になります。極端に安い家賃設定にしてしまった場合も、社宅提供ではなく給与としてみなされる可能性があります。そのため、一定以上の賃貸料を徴収することが必要になります。
床面積100㎡未満の社宅であれば、最低でも家賃は1万円~2万円に設定しましょう。固定資産税を元にした社宅の家賃算出方法は、
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
これらの合計金額が家賃の相当額になります。[注1]
ただし、社員から徴収する家賃が相当額の50%以上の場合は給与として課税されることはありません。
2.社会保険料の負担が上がらない
住宅供給手当を受けると社会保険料の負担額が増えることになりますが、社宅であれば従業員の社会保険料の負担額が増えません。
従業員にとっても社会保険料への影響がないのでコスト削減につながりますが、社会保険料は会社側が半分負担しているので、企業にとっても経費削減につながるのです。
しかし、社会保険料の負担額が増えないということは、年金の額や怪我や病気が原因で休業した際の給付額も増えないということ。社員が納得できる保障が受けられないなんて自体に繋がりかねません。この問題を常に孕んでいると留意しておきましょう。
3.資産価値としてのメリット
社宅は資産として企業にコスト削減メリットをもたらしてくれます。
自社物件や工場などの店舗が必要な場合、稼働率の高い不動産を所有することによって財務上のメリットがあります。
社宅は企業所有の不動産となるため、資産価値が上がれば資金調達などが容易になるのです。
ただし、資産価値を高めるためには稼働率を一定レベルに保つ必要があります。老朽化している社宅は社員からも人気がなく稼働率が下がるため、企業としては社宅のメンテナンスやリフォームなどにも注力する必要があるでしょう。
参考:No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm)
経費以外の社宅導入のメリット
社宅を導入することでコスト削減につながりますが、コスト以外の面でもいくつかのメリットがあります。
1.従業員が転勤する際に生じる負担の軽減
転勤がある会社の場合、社宅を用意することで社員・従業員の負担を軽減できます。
転勤は勤務地が変わるだけではなく、居住地を変更しなければなりません。そのため、新しい場所での生活、さらには引越しの負担など精神的にも金銭的にも負担になってしまいます。また、新しい住居を探す場合、不動産屋を巡る必要があるのも難点です。社宅を用意することで、少なくとも「新居探し」の手間が省略できます。
2.従業員へ金銭的負担軽減をアピール
社宅を用意することで、従業員に福利厚生をアピールすることが可能です。一般的に従業員は給料から家賃を出しますが、社宅であれば家賃負担が軽減されるため社員にとってメリットとなります。
人手不足で人員確保が難しい時代に、金銭面をアピールすることによって従業員獲得が可能になるかもしれません。
社宅の管理コストシュミュレーション
社宅には社有社宅と借り上げ社宅の2種類があります。
それぞれにメリット・デメリットがあるのでどちらを選択した方が経費削減につながるか検討する必要があるでしょう。
節税
- 社有社宅:固定資産税を支払う必要がある。
- 借り上げ社宅:固定資産税は不要で福利厚生費に賃料を含められる。
固定資産税は以前は購入時の価格の簿価で評価されていましたが、現在は実価値を反映した価格を資産として登録しなければいけなくなりました。
初期投資
- 社有社宅:比較的大規模な投資が必要。
- 借り上げ社宅:少ない投資額で済む。
社有社宅の場合、社宅建設用の初期投資が必要になります。さらに、社宅の保守管理も企業自身が行う必要性が生じます。しかしながら、借り上げ社宅であれば第三者の家主がすべて行うため、企業側には手間やコストがかかりません。
建物の状態
- 社有社宅:リフォーム代や修繕費の負担が大きくなる。
- 借り上げ社宅:借り換えを行うことができるので、老朽化した場合は新しい社宅に移ることができる。
建物の状態は劣化が避けられません。社有社宅は企業が毎度負担しますが、借り上げ社宅なら移り住みが可能なのでそうした負担は必要ありません。
退去、途中解約
- 社有社宅:自社の所有物なので解約金等は発生しないが稼働率が低下すると資産価値も下がり企業の負担になる場合がある。
- 借り上げ社宅:稼働率が下がると適切な規模の社宅に変更できる。
社有社宅は空室が出てきてしまうと稼働率が低下し、社宅の資産価値が低下してしまいます。その一方で借り上げ社宅なら稼働率が低下しても社宅変更をすれば済みますが、社員が入居するたびに賃貸契約を行わなければなりません。
さらに、解約をするにしても契約と敷金礼金の管理業務を交わすことがマスト。非常に手間がかかる工程なので、借り上げ住宅を導入している企業は社宅の管理を代行するサービスを利用しているようです。
維持管理費・修繕費
- 社有社宅:老朽化が進むと破損やリフォームが必要になり、修繕費や管理費がかさむ。
- 借り上げ社宅:契約時の内容によって違いがあるが、大規模な経費は不要。
借り上げ社宅は初期投資や建物の状態と同様、家主が行うため、企業側の負担はありませんが、社有住宅の場合はその都度解決しなければなりません。
資産価値
- 社有社宅:会社の資産となり財政上のメリットになる。
- 借り上げ社宅:会社の資産とは見なされず、財政上のメリットは期待できない。
社有社宅の資産価値は稼働率が高ければ上昇し、低ければ低下してしまいます。借り上げ社宅は家主の所有する資産なので、企業側の財政上のメリットはゼロに近いです。
月額賃料
- 社有社宅:月額賃料は不要。
- 借り上げ社宅:物件の所有者への支払いが必要になる。
社有社宅なら企業の持ち物なので賃料は必要ありませんが、借り上げ社宅は家主に支払います。
社宅管理の負担を軽減したい
社宅管理について、聞けば聞くほど「面倒」だと感じる人も多いのではないでしょうか。
メリットが多々あるのは間違いないのですが、一方で「自らそこまでしなければならないのか」と感じるほどにさまざまな手間・負担がかかるのも事実です。ましてや、管理を通常の業務と並行して行わなければなりません。
社宅の管理だけに集中できるとしても、それなりのリソースを消耗させられるものです。これらを通常業務と平行して行えるのでしょうか?
そのような不安のある方には以下のような選択肢があります。
社宅管理部門を創設する
社内に社宅管理部門を創設することで、社宅に関する事務をすべて任せることが可能です。セクションを作ることで、社宅業務・事務をすべて任せることができて効率化を実現できるでしょう。ただし、明確な利益を生み出せるかは定かではありません。経営的もしくは人手不足などに悩む会社や企業にとって、新しく社宅管理部門を創るのはリスクがあります。
社宅代行サービスを活用する
社宅管理業務全般を引き受けてくれる社宅代行サービスがあるので、そちらに依頼するのも1つの手段です。代行サービスなので費用面の負担が懸念点ではあるものの、社宅業務全般を引き受けてくれるため、会社側がリソースを割く必要がありません。
一方で、社宅代行サービスはさまざまな業者が対応しているので、自社に合った社宅代行サービスを選びましょう。
社宅代行サービスを利用するにあたって
社宅代行サービスに依頼すれば社宅管理業務を引き受けてもらえるので、社内にて社宅管理業務を行う必要性がなくなるのがメリットです。ただし、選ぶ際にいくつか注意点があります。
実績はあるのか
社宅代行サービスを選ぶにあたって、大切な点として「実績」が挙げられます。やはり気にするのは費用面ですが、その会社が社宅代行の実績をどれだけ積み重ねているかも大事なポイントです。多くの実績があるほど培われてきたノウハウがあるので、万が一のトラブルにも迅速に対応してもらえる可能性があります。社員や会社側が満足できるようにするためにも、どのような実績があるのか確認してみるのが大切です。
多くの実績がある社宅代行サービスであれば、経験を活かしたサービスが受けられるでしょう。導入事例があれば教えてもらい、参考にするのも良いでしょう。
実際に導入した企業がどれだけ負担が軽減されているのかを見れば、自社に必要なサービスか判断しやすくなります。
料金体系は明朗か
費用がどれくらいかかるのかも大切なポイントです。金額が果たして総額なのか、あるいはそこからいろいろと追加料金が発生するのか。この点は予算を組んで依頼するうえで、はっきりとさせておかなければならない部分です。
最初に確認した費用が安いと思っても、実際に見てみるといろいろと追加しなければならない可能性も考えられます。
納得したうえで契約を結ぶのか、あるいは理解を深めずに契約を結んでしまい、後になって想定外の事態や出費に悩むことになるのか。費用面については、事前に何度も相談したうえで決めるようにしてください。
どれだけ連絡をしてくれるのか
社宅代行サービスに一任すれば、社宅管理業務の煩わしさから解放されますが、どのように管理をされているかは気になるはずです。状況の把握も大切なので、どれだけ丁寧に連絡をしてくれるのかが重要なポイントとなります。こまめに連絡をくれるのか、あるいはこちらから連絡を入れなければ応対してくれない業者なのか。定期的な連絡を密に行うことで、万が一のトラブルにも対応しやすくなるでしょう。
明文化されていない部分になるので、この点は事前にしっかりと把握しておくようにしてください。
社宅代行サービスを利用する上での注意点
社宅代行サービスは上手く活用することで様々なメリットを得られる一方、利用するにあたって注意しなければならない点もいくつかあります。
どこまでが「業務」なのか
社宅代行サービスのどこまでが「業務」なのかは、相談前や相談時に確認しておきましょう。任せたいと思った部分が社宅代行サービスの範囲内なのか、或いは範囲外なのかによって、自社での管理範囲は大きく異なります。
社宅代行サービスとしても、あくまでも「業務」になるため、契約外のことについては対応できません。いきなり依頼するのではなく、どこまで業務として行ってくれるのかを知り、依頼したい内容にどれだけ対応してくれるかを把握。そうすることで、自分たちにとって必要なサービスなのかどうかが見えてくるでしょう。
解約はどうするのか
契約する際に解約のことまで考えておきたいと思うかもしれません。解約時にどのような形になるのかは、契約時に必ず確認しておきましょう。もし契約を結んだ後に解約方法を知り、その対応が難しいとなると、手続きに手間取る可能性が考えられます。
解約の際、何が必要なのか。違約金はないのか、解約の際の鍵の返却や原状回復の見積もりといった業務をどこまで行ってくれるのかなども要確認事項の1つです。
比較してみることも大切
社宅代行サービスを依頼したい際は、一社だけでなく複数の業者を比較するのがおすすめです。業者によってサービス内容や特徴が異なるため、比較してみることで各代行サービス業者の強み・特徴が見えてきます。
一社だけで「導入するかしないか」を決めようとした場合、例えば相場一つを見ても、高いのか安いのか判断がしづらくなってしまうでしょう。
普段から頻繁に利用するサービスであれば何となく相場が見えてくるかと思いますが、初めて社宅代行サービスを依頼する場合、相場を知っておくことでどの業者にするか決める判断基準になります。
業務に関してもどこまで対応してくれるのか、比較することで「サービスの整っている代行業者」なのかが分かるでしょう。
比較する業者が多ければ多いほど選定に時間がかかりますが、その分理想の代行業者を見つけやすくなります。
また、直接相談をしてみるのも1つの方法です。担当者がどのように対応してくれるのか、メリット・デメリットや実績などを聞いてみて、ここに任せたいと思えるところに依頼するのが良いでしょう。