福利厚生として社宅を導入するメリット・デメリット
社宅を導入するメリット
会社にとってのメリット
福利厚生と聞くと従業員側のメリットが大きいように感じますが、実は自社に福利厚生を導入することは会社にとってもメリットをもたらします。ここでは会社にとって福利厚生を導入するメリットを4つピックアップして紹介します。
社員のメンタルヘルス向上につながる
まず、社宅制度に限らず、全ての福利厚生制度の主眼は社員の身体的、精神的な健康を維持することにあります。
福利厚生が充実していると、従業員は「会社は自分や家族のことを大事に考えてくれている」と感じ、仕事に対するモチベーション向上に効果が期待できます。従業員のモチベーションが上がれば、業務上のパフォーマンス向上につながるので、最終的に会社全体の業績アップにつながると考えることができます。
社宅制度に関しては、従業員がリーズナブルかる快適に暮らせる住まいを提供することで、従業員の健康な生活を下支えするメリットがあります。
社員の満足度向上・離職率低下につながる
社宅制度をはじめとする福利厚生の充実度は、従業員の身体的な健康維持に貢献するだけでなく、精神的な満足度の向上にもつながります。
一般的に、従業員満足度の向上に最も効果的なのは報酬などの金銭的要因だと言われていますが、同業他社と比較して圧倒的に高い報酬を提示できる企業は決して多くありません。
そのため、報酬と合わせて福利厚生を充実させることで、従業員のモチベーションアップや満足度向上を実現して、優秀な人材の定着を図る企業が増えています。
福利厚生の中でも、社宅制度はすべての従業員の生活に直結する制度であるため、従業員満足度の向上や離職率低下に効果が期待できます。
企業のイメージアップ、優秀な人材獲得につながる
福利厚生が充実している企業は、求職者から見て非常にイメージが良いため、優秀な人材を獲得するための採用戦略として福利厚生を拡充する企業も増えています。
例えば、経済産業省と東京証券取引所が共同で発表している「健康経営銘柄」は、従業員の健康維持、健康向上を積極的にサポートする企業に与えられる認定制度で、健康経営銘柄に認定されると社会的なイメージアップにつながります。
近年では業務内容や報酬だけでなく、福利厚生がどれくらい充実しているかという基準で就職先を選ぶ求職者も増えているため、社宅などの福利厚生を拡充することは優秀な人材にアプローチするという点で企業側にも大きなメリットをもたらします。
税金対策につながる
福利厚生を導入、拡充する上で見落としてはならないのが、税金対策としての効果です。
福利厚生を実現するためにかかる費用は、一定の条件をクリアしていれば福利厚生費という名目で経費として計上することができるため、法人税を安く抑えることができます。
経費として計上するための条件は福利厚生の内容によって様々ですが、例えば社宅であれば、会社が従業員に社宅を貸与し、従業員から賃料相当額の50%以上を徴収している場合は、会社が負担する分の家賃を福利厚生費として計上できます。
従業員からの徴収額が賃料相当額の50%未満の場合は、会社の負担額は給与とみなされ、従業員にとっては所得税などの課税対象になり、会社にとっても社会保険料の算定に影響するため注意が必要です。
従業員にとってのメリット
社宅制度を導入することはそれぞれの企業や会社にとってメリットへつながるだけでなく、従業員にとっても収入面や税金面、生活面など様々な範囲でメリットを得られることが魅力です。
社宅による従業員のメリットをまとめました。
家賃が安い
社宅では会社が家賃相当額の一部を負担してくれるため、従業員は残りの家賃相当額を支払うだけで済みます。そのため、例えば地域相場であれば10万円の家賃の物件にも、5万円程度の家賃だけで住めるようになり、実質的に費用対効果を倍増させられることは重要です。
また、同じ物件なのに契約時期によって家賃が大きく変動するといったことも防げるので、異動や転勤の時期が異なる従業員間の不平不満を解消しやすい点もメリットでしょう。
節税効果がある
住宅手当として会社から家賃補助をしてもらった場合、その分の金額は給与の一部として見なされてしまいます。すると、所得税や住民税といった税金の課税対象額も増え、結果的に税金が増大してしまいます。
一方、社宅では住宅手当をもらったときと同じ生活レベルを維持できる上、課税対象額を上げずに済むため、実質的な節税対策になることがポイントです。
また、借り上げ社宅の家賃は源泉徴収前の給与から差し引かれるため、さらに所得を減らして節税効果を高められます。
住宅手当と違って所得税や社会保険料に影響しない
節税効果を期待できる場合と同様に、社宅によって所得を抑えることで、社会保険料として支払うべき金額も減らすことが可能です。これにより、従業員は毎月の手取り収入を増やすことができます。
ただし、社会保険料が減るということは厚生年金としてかけられる金額も減るということになるため、将来的な年金額に影響するかも知れないという点は理解しておきましょう。
初期費用(敷金・礼金・仲介手数料)や更新料が不要
自分の会社が賃貸物件を借り上げて社宅として使っている場合、一般の賃貸物件を借りるときのような初期費用(敷金・礼金など)が必要ありません。もちろん、不動産会社に賃貸契約や物件紹介を仲介してもらう必要もなく、保証会社も不要なので、仲介手数料や保証料を取られないことも魅力です。
また、社宅制度は福利厚生の一環として考えられており、例えば2年おきに契約更新料が従業員の負担になるといった心配もありません。その他にも様々な費用や支出を抑えやすくなるということは大きなメリットです。
退去時の原状回復費が不要
個人が物件オーナーや不動産会社と賃貸契約を結んでいる場合、部屋の使い方や退去時の状態によっては原状回復の費用が敷金を上回ってしまうこともあり、差額を請求されることがあります。
しかし社宅の場合、物件オーナーとの契約は会社が名義人となっているため、入居している従業員へ原状回復費が請求されることはありません。ただし、明らかに限度を超えている損傷等がある場合、事前の契約内容によっては何かしらのペナルティを科せられる可能性はあります。
部屋探しや契約の手間がなくなる
社宅は会社が従業員のためにあらかじめ用意してくれている物件であり、従業員は改めて自分で物件探しをしなければならないといった手間を省けます。また、一から賃貸契約を結ぶ必要もなく、転勤や引越で忙しいときに余計な労力を割かなくて良い点は重要なメリットです。
また、家賃の支払いに関する契約や保証会社との契約といったものも不要です。
会社によっては複数の社宅を保有しており、従業員がその中から選べるといった自由が認められているケースもあるでしょう。
社員同士の繋がりが強くなる
社宅へ入居している人は、原則として同じ会社の同僚やその家族です。つまり、日常的に同じバックボーンを持った人が身近に暮らしているということになります。
現代は隣近所の人との交流も減って、人間関係が希薄化しているとされています。しかし、社宅で日頃から社員同士のコミュニケーションを密にすることで、人間関係を強化して、業務面でも対話しやすい土台を整えられる点は魅力です。
また、互いに正体を知っている相手だからこそ不当なトラブルが起こりにくいことも重要です。