社宅制度における「役員」と「従業員」の違いとは?
社宅制度を設計する際に、総務や人事の担当者が直面するのが、「役員」と「従業員」の扱いの違いです。対象者が役員か従業員かによって、税務上の「賃貸料相当額」の計算方法や、徴収する家賃の水準が異なり、社宅管理規程における条件の設定も変わります。賃貸料相当額は、給与として課税されるかどうかを分ける基準となるため、役員と従業員で別の方法を適用する必要があります。この記事では、両者の違いを、税務処理、規程と対象範囲、自社で管理するリスクの順に解説し、社宅代行サービスを活用する場合のメリットも紹介します。
役員と従業員の社宅制度における「違い」は税務処理
役員と従業員の社宅制度における大きな違いは、税務処理にあります。会社が社宅を貸す際に、本人から受け取る家賃が、税務上の賃貸料相当額より低い場合は、その差額が給与として課税されます。賃貸料相当額の計算方法と、本人から徴収すべき水準が、役員と従業員で異なるため、対象者の区分を、はじめに確認する必要があります。
従業員の場合
従業員に社宅を貸す場合、賃貸料相当額は、次の3つの合計額で計算します。建物の固定資産税の課税標準額に0.2%をかけた額、12円に建物の総床面積(平方メートル)を3.3で割った数をかけた額、敷地の固定資産税の課税標準額に0.22%をかけた額です。従業員から徴収する家賃が、この賃貸料相当額の50%以上であれば、差額は給与として課税されません。他から借りた社宅も、同じ方法で計算します。賃貸料相当額は、固定資産税の評価をもとにした額のため、実際の家賃より低くなる場合が多く、実務上は、実際の家賃に対する本人の負担が、10%から20%程度となる例もあります。
参照元:国税庁「使用人に社宅や寮などを貸したとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2597.htm)
役員の場合
役員に社宅を貸す場合は、住宅の規模によって、計算が分かれます。役員の場合は、「小規模住宅」か、それ以外の「一般住宅」か、さらに「豪華社宅」に該当するかによって、賃貸料相当額の計算方法が厳格に分かれます。小規模住宅は、床面積が法定耐用年数30年以下の建物で132平方メートル以下、30年を超える建物で99平方メートル以下であることなどが要件で、従業員と同じ計算式を使います。それ以外の一般住宅は、固定資産税の課税標準額に、より高い率をかけて計算し、他から借りた住宅では、会社が支払う家賃の50%の額と比べて、多い方が賃貸料相当額です。豪華社宅と判定された場合は、社宅制度の節税のメリットは受けられず、通常の賃貸料との差額が、給与として課税されます。
参照元:国税庁「役員に社宅などを貸したとき」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2600.htm)
社宅管理規程と対象範囲の違い
税務処理の違いに加えて、社宅管理規程における、対象者の範囲や条件の設定も、役員と従業員で異なります。従業員と役員を同じ規程で扱うと、条件の設定や運用が複雑になり、制度の公平性や、税務上の判断にも影響するおそれがあります。規程は、対象者の区分ごとに、条件や手続きを整理して作成するのが一般的です。
就業規則との連動と「不公平感」の防止
従業員向けの社宅は、福利厚生の一環です。そのため、転勤者や、遠方からの新卒入社者など、対象となる従業員を、公平で明確な基準によって、就業規則や社宅管理規程で定める必要があります。基準があいまいだと、同じ条件の従業員の間で、利用できる社宅や、負担額に差が生じ、不公平感につながるおそれがあります。一方、役員社宅は、株主総会や取締役会での決議事項となる場合があり、従業員向けとは手続きが異なるため、規程を分けて作成するのが一般的です。
上限家賃や初期費用の負担区分
役員と従業員では、会社が負担する上限の家賃を、分けて設定する場合があります。たとえば、従業員は8万円まで、役員は20万円までといった設定です。あわせて、敷金や礼金などの初期費用、駐車場代などの自己負担のルールも、役員と従業員で区分を明確にして、規程に落とし込むことが、トラブルを防ぐための要点です。初期費用の扱いが決まっていないと、入居や退去の際に、会社と本人の間で、負担をめぐる認識の違いが生じやすくなります。
複雑な税計算と管理業務を自社で行うリスク
社宅制度を自社で運用すると、担当者の負担と、法務や税務のリスクが生じます。まず、担当者の負担です。役員と従業員で別々の家賃負担額を計算する作業に加え、固定資産税評価額の確認、給与天引きの処理、賃貸借契約の締結や更新、退去時の原状回復をめぐる対応など、総務や人事の業務量は大きくなります。次に、法務や税務のリスクです。特に役員社宅では、賃貸料相当額の計算を誤ると、税務調査で指摘された場合に、給与として課税され、追徴課税につながるおそれがあります。
社宅管理を社宅代行サービスに依頼するメリット
社宅の管理に関する負担を抑える方法として、社宅代行サービスの活用があります。サービスの内容は事業者によって異なりますが、役員と従業員で異なる賃料の計算から、給与控除のデータの作成までを任せられる場合があります。物件探しや契約の代行、解約時の精算といった業務も依頼できるため、担当者の作業の時間を減らせる場合があります。さらに、社宅管理規程の作成や見直しを支援するサービスも見られ、税務上の扱いを反映した規程を整えたい場合にも、活用できます。
まとめ|役員と従業員の違いを押さえ、税務と規程の両面で社宅制度を整える
社宅制度における役員と従業員の違いは、賃貸料相当額の計算方法と、徴収すべき家賃の水準といった、税務処理にあります。従業員は、賃貸料相当額の50%以上を徴収すれば給与課税されませんが、役員は、住宅の規模によって計算が分かれ、豪華社宅では節税のメリットが得られません。対象者の区分ごとに、規程で条件や負担区分を明確にし、税務上の計算を正確に行うことが、制度の運用を安定させる要点です。

