社宅規定作成のポイント|社員が選ぶ場合に取り入れたい内容
社宅を社員自身が探すケースもあります。ただ、会社も家賃を負担するなら、なんでもかんでも認めるわけにはいきません。認識の違いや誤解でトラブルにならないためにも、会社側は事前に社宅規定を設けることが大切です。社内規定という明確なルールにより避けられるトラブルは多いのです。
社宅規定に取り入れたい内容
家賃の上限
家賃の上限を規定します。家賃の上限を決めないと、社員間で不満が出る可能性があるからです。社宅借り上げの場合、会社がある程度、家賃を負担します。ただ、上手に割合を決めないと、従業員間で不公平感による不満が生じかねないのです。
たとえば、家賃が10万以下の物件があったとします。仮に会社の負担額の上限は10万円です。家賃が会社の全額負担になると現物支給として判断され給与とみなされるのです。結果、課税対象になります。会社が全額負担する分、従業員は手続きが必要となり、給与も減少するのです。
会社の負担割合を家賃の50%にしたとします。今度は、家賃が高い従業員は安い従業員より会社に多く負担してもらえるのです。負担額に差が出るため不公平感につながります。
バランスを取るなら、たとえば、上限10万円以内なら範囲内の会社負担は50%で、超えた分だけ社員負担にするという方法があります。敷金や礼金や仲介手数料にも注意が必要です。家賃が高いと、初期費用も高くなります。会社負担を考えるなら家賃の上限は抑えたほうがいいでしょう。
勤務先の距離
物件と勤務先との距離も規定に入れたほうがいいです。物件と勤務先が遠ければ交通費の支給が発生します。家賃を負担した上で交通費も支給すれば、会社側の負担が大きくなります。また、業種によっては緊急事態に陥った場合のことも考えなければなりません。
有事があるとすぐに勤務先に駆けつけなければならない業務の方です。会社までの距離が1時間以上となればすぐに対応できません。そのため、社宅と物件の距離に規定を設けたほうがいいのです。できるだけ近場で探してもらうようにしましょう。
間取り
間取りは借り上げ社宅だと、1Kや1LDK、40m2以内という設定が一般的です。入居人数に合わせた上限設定をします。「多少、負担があっても、もう少し大きな家に住みたい」と希望する社員もいるかもしれません。
ただ、広すぎると会社負担が大きくなる可能性が出てきます。理由は原状回復費です。部屋が広ければ、壁紙や床の張替えの面積も増えるために原状回復費はふくらみます。会社負担が大きくなりすぎないようにするには、広さについても注意が必要です。
築年数・建物構造
築年数は、耐震基準を踏まえ、築年数を10年単位で上限を決めます。築年数が古ければ、劣化もありますし、新耐震基準ではなく、昔の耐震基準で建てられた物件かもしれません。家賃負担は抑えられますが、万が一の時、社員のことを考えると古すぎるのはよくないです。
同じく危険区域も規定条件に入れたほうがいいでしょう。防災面を考えるなら建築構造は木造より、鉄骨鉄筋のほうがリスクは少ないです。防音が甘くご近所トラブルに発展するリスクもあります。その点を踏まえて規定を決めてください。
同居人の入居
同居人も一緒に入居できるか検討が必要です。同居人はOKでも、婚姻関係の有無、家族だけ、三親等以内などの要素も考えます。友達や恋人は、従業員の家族ではないため、社外の人間という判断です。
社宅はあくまで社員のために用意された家と考えます。社員の福利厚生ですから会社が家賃を負担するのです。友達や恋人は従業員との関係は深いですが会社にとっては無関係といえます。そのため、婚姻関係や三親等以内というのが許容できる範囲です。
室内の禁煙
禁煙部屋だけを設定したほうがいいでしょう。室内で喫煙をすると、壁紙の汚れて臭いが染み付いていいことはないからです。原状回復費もかさみますから、会社負担を少しでも避けたいなら禁煙部屋になります。
また、タバコの臭い、ポイ捨てをすれば他の入居者とトラブルに発展するリスクもあるのです。寝タバコによる火災リスクも考えなければなりません。また、電子タバコやベランダで吸う分にはどうかも踏まえて規定を考えたほうが無難です。
ペット飼育
ペットの可不可も重要です。一昔前はペットを禁止する企業がほとんどでした。ただ、近年では、ペットも家族の一員という価値観も増えてきたため許可を出す企業も増加傾向にあります。ただし、原状回復費のことは考えなければなりません。
動物の獣臭、猫が壁や柱で爪を研ぎ、犬も傷つけるリスクがあります。また、ペット可物件は通常の物件より敷金が高くなる傾向があるのです。敷金が倍になるため初期費用は高くなります。他にも鳴き声や走り回る音がご近所トラブルになるリスクもあるのです。
その他会社別に取り入れたい内容について
業種ごとの規定
例えば報道機関の場合、24時間、有事の際にはすぐに駆けつけなければなりません。距離や災害区域を避け、マンションなら何階以上という規定が適しています。工場系は人の入れ替わりが多いため、入居者入れ替えや短期解約違約金など、退去時の項目設定が重要です。
製造系やライン保守は、会社機能がストップすることを避ける規定が求められます。徒歩圏内、勤務先から500m以内などの規定がいいでしょう。飲食や接客系だと帰宅時間が遅くなります。女性は特に注意が必要です。そのため、距離を規定に入れます。
IT系はセキュリティとインターネット環境が重要です。テレワークも考えて、部屋の防音防犯インターネットセキュリティ環境を規定に盛り込みたいところです。上記、業種の働き方を考えた上で規定を作成しましょう。
女性社員が多い企業の規定
女性社員が多い場合、セキュリティの重視が必須です。社宅に求められるのは、オートロック、マンション、防犯カメラ、1階以外などがあげられます。とくに一人暮らしの女性が対象なら、セキュリティは規定に盛り込んだほうがいいでしょう。
注意点はセキュリティ面を充実させれば、比例して家賃も高額になる点です。ただ、セキュリティ面は無視できないため、企業側は家賃上限の引き上げが求められます。当然、会社の家賃負担額も大きくなることは避けられません。
周辺環境を考慮した規定
周辺環境にも配慮したいところです。飲食店が1階、隣にあるような物件、繁華街から何メートル以上離れるなどの規定を盛り込みます。飲食店が近くにあると虫やネズミのリスクがあるからです。衛生面を考慮すると避けたほうがいいでしょう。
繁華街近辺は夜まで騒がしい日が続きます。女性の場合、夜出歩くときなどトラブルリスクが高まるのです。また、同じ物件に繁華街で働いている人がいたとします。生活リズムが真反対だと、睡眠中に隣や階上から生活音や話し声が聞こえるリスクがあるのです。結果、トラブルリスクが高まります。